僕が「趣味は自転車です」と言えるようになるような自転車に出会い、乗ることになったのは今から7年前…
近所の自転車屋で試乗したクロスバイクの今までに味わったことのない軽快さに感動して、中学生の限られたお財布事情の中、即断で購入をしたところからこの趣味が始まった。
…
時は流れ、大学生になり、キャノンボール(後日別記事で書いていきたいです。)に挑戦することになった流れでブルべ界隈の人々を知り、縁があって、今年の4月にフレッシュに参加することに。
フレッシュとは…
3~5人のチームで360km以上を24時間で走るイベント。フランス語で「矢」って意味があるみたい。普通のブルべと違い複数人で走るので楽かと思いきやしんどかったりする。(これも別記事で書ければいいな)
フレッシュも必要な装備は通常のブルべと同じで、
・フロントライト2灯
・リアライト2灯
・ヘルメットリアライト
・反射ベスト
が必要になってくる。
他にも、ある程度のトラブルに自分で対処できるような工具類も持っておきたい。
フレッシュに参加するにあたって、これだけの装備をそろえることになったので、
「せっかく揃えたんだしブルべも出るか」
というのが今回ブルべを走ることになった動機。
通常版ブルべは4つの距離に分かれていて、短い順に200,300,400,600とある。
でもなぜ初ブルべで600なのか
理由は単純。
「一番近い開催地で直近で開催されるブルべだったから」
この文章をここまで読まれた方なら察しがつくでしょうが、流石に僕は一般的に言う自転車初心者じゃないだろうと思います。中級ライダーといったところでしょうか。
何故こんなことを言うのかというと、最近巷で言われている「初心者こそブルべを走れ」理論。200kmブルべとかであればまだわかりますが、600kmは自転車始めたばかりの人にとって無謀以外のなにものでもないです。各クラブやAudax Japanでも言われているように200kmから認定をとっていくのがベターです。
僕が住んでいる所から一番近いブルべの開催団体はAJ静岡。それで直近の開催時期のブルべがBRM0525 高山600
BRM525高山600 - Audax Japan Shizuoka AJ 静岡
大井川の河口付近をスタートして、長野を通り岐阜県高山市まで行き、中津川を経由して、再び大井川に戻ってくるルート。ルートラボ上で獲得標高が8800mとあって、600kmブルべシリーズの中でもかなりの難易度であるとのこと。
僕が今まで一回のライドで走ったことのある最長距離は560km(大阪→)、そのときも獲得標高は3500m程度。なので、今回のブルべは自分にとって完全に未知の領域だった。
「いけるか?」と何度も自問自答したが、最後は勢いでエントリー。
…出走前日。まで電車で輪行して、ネカフェで一泊する。
部活の自転車旅行でよく利用するので、すんなり寝れると思っていたが全然寝れない。
漫画や雑誌を読めば眠くなると思ったが全然寝れない。6時間は寝ようと思って、22時前にはネカフェにINしたのに結局2時間ちょっとしか寝れなかった。
5:00、集合場所の河原に行くと車がちらほら…
車中泊している人がほとんどの様子。いいな、車ほしいな、って思った。
5:30、ブリーフィング開始。主催者の方からのコースの説明や諸注意、
「もう600までくると慣れてると思うので…」と言われ、本当に初ブルべの人が行ってよかったのかな?ってちょっとたじろぐ。
6:00、車検&スタート。車検なんかも当然初めてなので緊張。おどおどしながら車検を受けようとすると、代表の方から「初めての人だ。頑張ってね」と声を掛けられ元気をもらった。無事、車検を通過して、スタートできた。
スタートはそこそこの集団でまとまっていく。レースじゃないけどレースっぽい感覚。
最初の登りで集団がばらけていく。峠を越えてからしばらくの平坦。追い風だったのでいいペースで走行できた。R257に入って暫くしてPC1に到着。ゆっくり補給を取ってたら後続の方々も到着。そして5分くらいで出ていく。ランドヌールの補給速いなぁ…
PC1新城からPC2豊岡までの100kmは登りばかり。よいしょよいしょと登っているとPC1で先行された人に追いつく。せっかくなのでおしゃべりしながら登ることに。関東のほうのブルべによく出ていてヒルクラレースにも出られている方で、最後尾からここまで全員抜いてきたらしい。すごい…
思ったよりも登りが長く、ハンガーノックになりそうだったので少しペースを落として12時頃に頂上に到着。標高1000mもあるはずなのに暑い。ちょっと下ったところにある道の駅で水分を補給。ここで先ほどの方には先に行ってもらう。
ここからは暑さとの闘い。5月にしては異常な気温と太陽光が、体力を消耗させる。15km走っては飲み物を交換する。こうして水分ばかり取っているとだんだん固形物を受けつけなくなってくる。まだ200kmも走ってないのにこの状態。頭の中に「DNF」の文字が浮かぶ。
PC2を過ぎ、しばらくアップダウン。ここの広域農道は走ったことがあって結構好きな道でかつ追い風だったが、体がオーバーヒートしているかのように熱く、途中水をぶっかける。しかし、ぶっかけた水も5km走ると乾く。権兵衛トンネルは上り坂だったが涼しいのでペースが上がった。夏はトンネルで生活したいなって思った。
権兵衛トンネルをが終わると下ってPC3木曽。240kmほどしか走ってないが、もういっぱいいっぱい。「高山まで行ってリタイヤしようかな」とか考え始める。
長野、岐阜県境にある長峰峠を登っている頃にはもう真っ暗に。途中、野ギツネが飛び出てきて並走したりするサプライズもあったがなんとか頂上へ。灯もほぼなく真っ暗。
下っているうちに前日の寝不足も相まって眠気が出てくる。このままだとヤバいと思い、そこらへんにあった道の駅のベンチで仮眠。気づくと3時間経ってた。
昼間との気温差もあり、とても冷える。前半のしんどさもあってかなり気持ちはネガティブだった。ブルべの完走ギリギリペースの15km/hペースどころか18km/hペース以上を維持できていたが、あと半分の距離を戦えるかどうか、当時の僕の頭の中では疑問しか浮かばなかった。
そんなこんなでPC4高山に到着。この時午前1時。この時にコンビニにこのブルべの参加者らしき人を発見。その人が食料をもって仮眠場所に移動する様子を見て、「まだ勝機はある」と思って、次のPC、中津川までは頑張ろうと決意。
朝になって日が出てくると、また日焼けで体力が奪われていき、風の影響も強くなる。そのこともあって、夜の間に距離を稼いでおきたかった。
途中下呂の河原にある温泉に寄った。どうせ誰もいないだろう、夜中の3時半だし。と思って近づいていくとざわざわしている。10人ぐらい入っていたのである。この人たちは一体何者だったのだろうか。風呂に入っている人々は反射ベルトを着た顔の死んでる青年を見てどう思ったかは知らないが…
20分ほど足湯に入り、再スタート。心なしか足が軽い。足湯の効果を実感できた。今後も足の疲労回復の手段の一つとして考えておきたい。
下呂を過ぎたら登りがあってそれを超えたら中津川。ここらへんはサイクルスピーカーの音楽で気を紛らわせながら無心でクランクを回していた。ここらへんで、いくら頑張っても心拍が160以上上がらないことを知る。前半は大体160前後くらいで維持。登りは170~180くらいだった。
中津川のPCとなるコンビニの2kmくらい手前でカモシカに遭遇。写真を撮る余裕はなかったが、初めて見るカモシカにちょっと興奮。7時前には中津川に到着。朝にはなってしまったが、まだ太陽が上がりきってないうちに距離を稼いでいく。
ここのPCから少しするとR257に復帰。またまた峠をを超え、岩村城下町の脇を通り、愛知県へ。ここからは2週間前に新緑を見にサイクリングをしていた道と重複する。ダム建設でこの区間の道もダムの下に沈むんだっけなどと考えながら山間部を抜け設楽町中心街。ここからPC6新城までは基本下り勾配。知っている道だったので帰ってきたという感覚が徐々に強くなっていった。
途中、「この先、千枚田」の文字が見えた。正直ゴールはできるだろうと思っていたので寄り道していくことに。結構登らされたが、この時点で7000mは登らされているのでもう何も考えずに登ることができた。下から上まで広がる棚田がダイナミックで緑が広がっていて綺麗だったが、ここら辺からまた昨日苦しめられた太陽が本領を発揮してきたことを悟る。そそくさとコース復帰。PC6を目指した。
ここら辺から南風が強くなってきた。北から南下してきているルートをとっている僕にとっては向かい風になる。この先ゴールまでの風を心配しながら11時頃、PC6に到着。
先述の通り、固形物を体が受け付けなくなっていたけど、寒くなったからか、一睡したからか、高山からはある程度固形物を口にすることができるようになっていた。その中でもすんなりと口にできたのがカップラーメンであった。これも大きな収穫である。PC4から毎PC、カップラーメンを食べるのがモチベーションになって自転車を漕いでいたところが少しあった。
PC6からは大きな登りはないだろうと思っていたが、南風がさらに強くなり、踏んでも30km/hちょっとしか出ない。途中、何回かあったアップダウンの勾配がきつく感じた。暑さも本格的になってきたので20kmおきに水分+アイスを食べようと決める。最後だし固形物が入らなくなっても差し支えないだろうと思った。しかし、最後の区間が80kmあるうち、40km~の後半部分にコンビニがなかったことを思い出す。後半部分にはラスボスの登りがあるが気合で乗り切ることに。だがこの峠、200mアップくらいで大したことないだろうと思っていたが、勾配的には今回登場した峠の中で一番キツかった。林道なので日陰になって涼しいと思ったが、思ったよりも暑さが直接届いてきた。最後だし足つくものかと思い気合で登りきった。
あとは下ればゴールとなるわけだが、下りのコーナーで落車。道全部に砂利がかかっており、コーナー侵入時には落車を悟った。幸い大したケガもなく、自転車もブラケットが曲がっただけで済んだ。自分は下りが得意だと調子に乗っていたところがあったから起こった落車だったのかもしれないので反省しなきゃいけないと思った。
その後は何事もなく、ゴールに到着。15時18分。スタートしてから33時間18分のことであった。
ゴールの受付でPC通過証明のレシートを渡す。無事手続きを終わらせると1日目のヒルクライムで一緒に走っていた方がいらっしゃった。「初ブルべでこれは上出来」とお褒めの言葉を頂き嬉しかった。
ブルべは順位を競うスポーツではないが、6番目に到着したとのこと。
完走者が購入できるメダルはそのものの重さよりも重みを感じた。
結局、獲得標高は7500mとルートラボ上の表示よりも1000m少なかった。もう1000m登ってたらどうなっていたか…
消費したカロリーは17000kcal。走行中の補給である程度摂取しているが到底足りる量ではないので、来週はデブ活をしていかないといけないかな。
7年前の当時中学2年生の僕に「君、7年経ったら自転車で600kmを走るようになってるよ。」と言ったらどういう反応を示すのだろうか。多分信じてくれないような気がする…
今年のブルべの中では最高レベルに難易度が高いらしいものをクリアすることができたが、今年中に200,300,400kmブルべを完走すればSR(シューペル・ランドヌール)の称号を手にすることができるらしいのでそれを目指してみたいなと思ってたりする。